腎臓内科のイメージ

腎臓には生命を維持するための様々な重要な機能があります。まずは体に不要となった老廃物を尿として排出する機能、そして体内の水分バランスを調整する機能、血圧を調整する機能もあります。さらに血圧を調整したり、赤血球を増やすホルモンにより、血液をつくる働きを有したりもしています。

そんな腎臓に関わる病気には、様々なものがありますが、その多くは初期に自覚症状があまりなく、健診等の尿検査で、タンパク尿や血尿(尿潜血)、あるいはクレアチニンの値やeGFR(糸球体濾過量)の値が異常と指摘されたことによって気づく場合も少なくありません。

腎臓病は早期発見、早期治療を行えば、治癒する可能性も高くなります。逆に放置しておくと、腎不全を引き起こし、人工透析が必要となる場合もあります。気になる症状がありましたら、また健診等で異常を指摘されましたら、早めの受診をお勧めします。

以下のような症状がみられましたら、腎臓の病気の可能性がありますので、受診をお勧めします。

  • 尿が泡立つようになった
  • 尿の量が減ってきた
  • むくみが出た
  • 血尿(肉眼的血尿)が出た
  • 発熱が続き、いつもより濃い尿が出てだるさや貧血症状を伴っている

腎臓内科でみられる疾患例

  • 腎炎(急性・慢性)
  • 腎不全(急性・慢性)
  • ネフローゼ症候群 
  • 慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)
  • 高血圧性腎硬化症
  • 糖尿病性腎症
  • IgA腎症
  • 遺伝性腎疾患(多発性嚢胞腎)
  • 急性腎障害 など

腎炎(急性・慢性)

腎炎は腎臓に炎症が生じ、主に糸球体と呼ばれる組織が障害されてしまう病気で、発症経過によって急性腎炎、慢性腎炎、さらに急速進行性腎炎に区別されます。

急性腎炎は急性糸球体腎炎とも呼ばれるもので、腎臓の糸球体(血管から尿をこし出す組織)が炎症を起こし、尿の泡立ち(蛋白尿)や血尿、むくみ、倦怠感、高血圧などの症状が現れます。原因としてはのどや皮膚の炎症を引き起こす溶血性連鎖球菌の感染によって起こるとされており、喉や皮膚の炎症が治まってから1~2週間後に血尿などの症状が現れる場合があります。数日から数週間にわたって続くものですが、治療として溶連菌に対する抗菌薬を用い、水、塩分、タンパク質の食事制限を行って安静にしていれば多くは1カ月以内に治癒します。

慢性腎炎は慢性糸球体腎炎とも呼ばれ、急性腎炎と同様、糸球体に炎症が起こるものですが、蛋白尿や血尿の症状が1年以上続くものを指します。慢性腎炎には様々なタイプがあり、日本人で一番多く見られるのがIgA腎症というものです。これは糸球体にIgAというタンパク質が沈着する病気で、2~3カ月かけてゆっくりと炎症が進み、組織が破壊されていってしまいます。血尿や蛋白尿がみられますが、当初は無症状であることが多く、検尿などで発見されることも多くなっています。治療としてはステロイド剤などによる薬物治療が有効ですが、早期に治療を開始することが重要で、治療せずに放置していると、人工透析が必要になる場合も少なくありません。

急速進行性腎炎は、やはり糸球体が炎症を起こすものですが、数週~数カ月で糸球体の大半が破壊されてしまう激しい炎症で、短期間で末期腎不全に陥って人工透析が必要となってしまいます。特に高齢者に増加傾向にあり、血尿、蛋白尿とともに全身倦怠感、体重減少、さらに進行すると吐き気、血痰や血便、皮膚の出血、意識障害などが現れます。原因はよくわかっておらず、何らかの免疫異常が関わっていると考えられています。治療としては、副腎皮質ステロイドの大量投与を行うことが多くなっています。また、免疫抑制剤の投与や、血液を入れ替える血漿交換を行う場合もあります。何よりも早期に診断を確定させることが重要になります。

腎不全(急性・慢性)

各種の腎臓病が進行してしまい、腎臓の機能が低下すると腎不全と呼ばれる状態になります。腎不全には急激に機能が低下する急性腎不全と、数カ月から数十年という長い期間をかけて、徐々に腎臓の機能が低下する慢性腎不全があります。

急性腎不全では、症状として血尿、吐き気や食欲不振、全身の倦怠感、意欲の減退、痙攣(けいれん)などがあり、さらに尿の出が悪くなる乏尿になったり、まったくでなくなる無尿になったりということも現れます。原因としては出血や下痢、心臓病、薬剤の影響などによる「腎臓への血流の減少(腎前性)」、急性糸球体腎炎などの腎臓病による「腎臓の細胞障害(腎性)」、尿路結石や前立腺肥大症等による「尿路の閉塞(腎後性)」などが挙げられます。

治療としては、原因となった事象を改善することが重要になります。腎前性であれば輸血や輸液を行って、かつ原因となっている疾患の治療を行う必要があります。腎性の場合は抗菌薬や免疫抑制薬など、こちらも原因となる疾患の治療を行っていきます。さらに腎後性も同様に尿管カテーテルの層尿など、疾患に応じて尿路の閉塞を改善することが重要です。急性の場合は、原因となる疾患を改善できれば、尿毒症を起こして一時的に透析が必要になったとしても、数日~数週間で腎機能の回復が望めます。

慢性腎不全の場合は、自覚症状がないままゆっくりと腎機能が失われていくもので、腎臓のろ過能力が正常時の30%以下となってしまい、体内の正常な環境を維持できない状態のことを指します。基本的に失われた腎機能は回復しません。原因としては慢性腎臓病(CKD : chronic kidney disease)が進行することによって発症し、最終的には人工透析や腎移植をしなければ生命維持が難しくなってしまいます。

慢性腎不全の症状としては、夜間の尿が増え、尿の色が薄く無色へとなっていき、末期になると尿が作られなくなって乏尿・無尿になります。また体内に尿毒素や余分な水分が蓄積する尿毒症を引き起こし、急性心不全と同様の、吐き気や食欲不振、全身の倦怠感、意欲の減退、痙攣(けいれん)などの症状を引き起こします。さらにむくみや高血圧、呼吸困難などもおこります。治療としては、早期の場合は慢性腎臓病の原因となる高血圧や糖尿病の当の疾患の治療を行うことが重要で、できる限り腎不全の進行を遅らせることが治療方針となります。健診等でクレアチニンの値やeGFR(糸球体濾過量)の値が異常と指摘されましたら、早めに受診いただき、ご相談ください。

※慢性に経過するすべての腎臓病を指すもので、自覚症状がほとんどなく、蛋白尿や腎臓の働きを示すeGFR値(糸球体濾過量)が60mL/分(健康な人の60%)未満に低下し、3カ月以上持続する病気を指します。

ネフローゼ症候群

ネフローゼ症候群とは、血液中に含まれるアルブミンというタンパクが、大量に尿中に漏れ出してしまい、血液中のタンパクが減る「低タンパク血症」になり、様々な症状を発症してしまう病気です。まず現れる代表的な症状として、「むくみ」「体重増加」「尿量の減少」「尿の泡立ち」があります。

ネフローゼ症候群には、明らかな原因疾患がない、一次性(原発性)ネフローゼ症候群と、全身性の疾患が原因となる、二次性(続発性)ネフローゼ症候群があります。一次性のものとしては微小変化型ネフローゼ症候群(小児に多い)や膜性腎症(60歳以上に多い)などがあり、また二次性のものとしては糖尿病や膠原病によるものなどがあります。

血液中のタンパクが尿中に漏れ、排泄されてしまうのは、糸球体が炎症を起こし、そのために血液の濾過機能が低下して、本来通過できないタンパクが通過してしまうことによります。一次性ネフローゼ症候群では、実は糸球体が炎症を起こす理由がよくわかっておらず指定難病となっています。

病状が進行し重症化すると、肺や心臓に水が溜まりやすくなったり、腎不全になったりするほか、低タンパク血症は血中のコレステロールを増やしてしまうため、血栓による肺梗塞や心筋梗塞、脳梗塞などの合併症を引き起こす危険もあります。

ネフローゼ症候群の診断は、まず尿検査と血液検査で行います。尿検査では尿中のタンパクが1日3.5g以上、また血液検査では血中のアルブミン濃度が3.0g/dL以下で、この両方に該当する場合、ネフローゼ症候群と診断されます。さらにむくみの度合いやコレステロール値も考慮され、超音波(エコー)検査や腎生検を行う場合もあります。

治療としては、二次性ネフローゼ症候群で原因が明らかな場合はその治療を行います。タンパク尿の改善のためには、副腎皮質ステロイド薬を内服または点滴により投与します。点滴では「ステロイドパルス療法」と呼ばれる高用量のステロイド薬を3日間、集中的に点滴する療法を行う場合もあります。副作用として低血圧や不眠、感染症に罹りやすくなるなどがありますので、慎重に行う必要があります。

副腎皮質ステロイド薬で改善がみられない場合、免疫抑制薬の使用も考慮します。また、病気の種類によっては生物学的製剤の“リツキシマブ”などによる治療を検討する場合もあります。この他、むくみへの対策として食事療法を行ったり、血栓を防ぐための薬やコレステロールを下げる薬を使用したりすることもあります。